ビハインド・スキャンダル~俺たち友達なのか!?~
全年齢短編漫画です。かわいい系イケメン芸能人のジョン・ドウンと平凡な大学生のイ・チャンの両片思い物語です。設定や展開は割とベタですが、攻めのドウンのかわいさと、受けのチャンのツンデレ猫感がかわいくて毎話に萌えポイントがあります。気持ちを隠しながら様子を伺って勝手にドキドキしてる二人がめちゃくちゃかわいくてずっとニヤニヤできます。
羊のマスクを被った男
いわゆる「BLらしい」愛や恋愛ドラマはありませんが、サイコスリラー的な刺激があってとても面白い漫画です。
兵役中に周囲の人や上司のユヒョクからセクハラを受けたパク・ケヨルが、除隊後にその復讐としてユヒョクを監禁し、性的に暴行するというストーリーです。ケヨルもユヒョクも報われないバッドエンドなのですが、個人的には、この結末が最も腑に落ちるような気がしました。トラウマで苦しみ犯罪に手を染めて死んでしまうケヨルも、加害者でありながら幸せに生きていたユヒョクが復讐を受けるのも、因果応報のようでそうでないような、正しさという物差しで彼らを判断するには心もとない、あまりにも無常で凄惨な人間の一生が感じられました。
心の奥を覗かせて
『羊のマスクを被った男』のPaskim先生が描いた長編連載です。驚くべきことに全年齢BLです。とはいえシリアスな作風は変わらず、キャラが受けている心理的な苦しさも相当あるので、この手のジャンルが好きな人には刺さると思います。
メインCPは黒髪メガネの蒼空と茶髪優等生の桐斗です。蒼空はクラスメイトの天輝に思いを寄せており、趣味のカメラで彼を盗撮(!?)していました。それを偶然桐斗に知られてしまい、桐斗が蒼空の弱みにつけこんで弄ぶ過程で、蒼空を好きになってしまうという物語です。
蒼空も桐斗も辛い経験やトラウマを抱えており、特に桐斗は幼少期から親との関係に問題があるせいで、情緒がかなり不安定です。蒼空にもトラウマがありますが、精神は比較的安定しており、似た寂しさや悩みを抱える桐斗に共鳴する形で、桐斗の支えになっています。結果として、最初に出会った時から関係が徐々に変化していくのですが、そこでの桐斗の感情が不安定でヒステリックで、メンヘラさが加速していく様子がすごく魅力的です。この重い愛情を蒼空がどう受け止めるかが今後の見どころですね…。
ちなみに、本国版→英語版→日本語版の順で連載が進んでいるので、韓国語が読めなくても英語版である程度の先読みができます。加えて、名前のギミックが凝っていて、原題"클라우드(クラウド)"に関係する「空」「雲」が名前に組み込まれているという面白さもあり、各言語で読むとさらに楽しめる作品です。
余談ですが、英訳版紙書籍販売を切望するファンによって署名が集められています。
フラッシュライト
トラウマにより人前で歌えなくなってしまったアマチュア歌手のユジンと、ユジンの歌声を聴かないと眠れない人気俳優のアーロンがホテルで出会い、口論の末倒れこんだところを熱愛スキャンダルとして勘違いされたことから、偽装カップルとして関係を結ぶ話です。6月に連載が開始されたためまだ情報が少なく、話が進むにつれてもっと面白くなっていくと思われます。ユジンが元タチでアーロンに対してはウケなのですが、それが個人的にめちゃくちゃ萌えます。ユジンの気の強さやアーロンに対しての心の距離が、今後どう縮まっていくのかを楽しみにしています。
キャンパス陰謀論~キレイな顔が大好きです~
『フル・ボリューム』を描いたやんうんじ先生の短編です。「人気者で社交的な陽キャ」というキャラを必死に守る大学生の蓮と、近寄りがたい陰鬱な見た目で自己中心的な性格の道政が偶然グループワークをすることから始まる恋愛物語です。極度な面食いの蓮が、メガネを外した道政の顔にときめいて翻弄されてしまうところが可愛いですし、何よりも、やんうんじ先生の描くキャラは全員愛嬌があって親しみやすさを感じます。デフォルメキャラやユニークなコメディ要素が沢山あるので、読んでいて幸せになれます。最高です。
クズの情事
※6月末にレジンコミックス、ベルトゥーン共に配信終了してしまった作品のため、現在は購入することができなくなっています。
スラム街で貧しく産まれ育った森将生が、自警団の仕事で売春クラブ「キングコブラ」の社長キョウスケ・リーに男娼としての魅力を見初められアプローチされたことで、将生がキョウスケに片思いをしてしまうという話です。
攻めのキョウスケは恋愛感情を所有欲と勘違いしており、無意識に将生に惹かれているにもかかわらず、契約関係によって将生を自分専用の男娼として「所有」しようとします。普通ならここで幻滅して恋愛を終わらせようとするはずですが、「クズの情事」というタイトル通り、将生もある種の異常さを持ち合わせています。
キョウスケが身内に裏切られたときに将生は売り飛ばされ、過酷な男娼生活を送ることになるのですが、それでも幸せな未来を諦めることはしていませんでした。加えて、キョウスケと再度出会うために、変態の金持ちをスポンサーに付けて芸能人としてメディアに出るなど、病的なまでの強さとキョウスケへの執着心を持っています。
とにかく将生がかわいそうで胸が痛くなる物語なのですが、当の将生本人は不屈の精神で絶望的な現実を打開しようと頑張っていて、たくましすぎる将生のかっこよさに惚れ惚れとしてしまいました。二人して執着心が異常ですし、お互いのためなら何でもできてしまう将生とキョウスケは無敵だと思います。
ヨナとチャンイル
『クズの情事』のジョン先生が描いた別作品です。スラム街で生きるヨナは男娼のチャンイルに惚れており、チャンイルを買うために奮闘するヨナとそれを拒むチャンイルが紆余曲折を経て結ばれる話です。
ジョン先生の作品をいくつか読んで分かったことは、ジョン先生は攻めも受けも過激で深刻な問題に直面させるのが好きそうだということです。誤解を恐れずに言うと、「キャラをかわいそうな目に遭わせる趣味があるなあ」と思いました。『クズの情事』でも苦しい展開が長く続いていましたし、この作品でもチャンイルはどん詰まりのどん底を歩いています。個人的に、おそらくこれらの悲劇的な展開がエロ描写と結びつくことで、ポルノとしての刺激を高めているんじゃないかなと邪推しています。このように過激なポルノ描写がある一方で、モノローグの文章や心理描写も丁寧で美しいため、変態的な純文学を読んでいるみたいで、めちゃくちゃ面白いです。
ジョン先生は漫画も小説も両方作っているらしいと知って、文章の美しさと漫画のうまさが両立していることが腑に落ちました。凄すぎる。
Shutline
読んでいないことを後悔したランキング1位のBL漫画です。
道端でフリーの整備士をするムン・シンゴンが、偶然出会ったジェイク・ギランをカモ客にしようと詐欺を企んだところ、実は危険な男だったジェイクにやり込められて囲われてしまいます。この出会いを契機として、シンゴンがジェイクの仕事に関わったり、性的な関係になったりして時間を共にしていきながら、お互いを知って惹かれ合っていく物語です。
金髪坊主の攻めジェイクのキャラデザが印象的で、無造作な坊主スタイルでありながらとんでもなくセクシーです。対する受けのシンゴンもめちゃくちゃセクシーで、片方だけ一重な左右非対称の目と、飾らない素朴な雰囲気に引き込まれます。そして二人とも肉体美が素晴らしいので視覚的な満足感があります。
二人が合意の上でお互いを利用し合ったり、腹を探り合いながら徐々に信頼を深めていったりする様子も最高です。人生経験が豊富で自立した30代のジェイクとシンゴンが、お互いに背中を預け合っているところにバディ的な絆を感じますし、受けのシンゴンが身体的・精神的にたくましくてめちゃくちゃカッコイイです。洋画的なハードコアものや、男前受けを求めている人は絶対に読んでください。
オーディオドラマ(日本語字幕有り)もありますし、つい先日カットアウトアニメーション(日本語字幕有り)も販売開始しました。配信プラットフォームはどちらもVimeoOndemandです。
オーディオドラマ
カットアウトアニメーション
ちなみにキャラソンもあります。
メディア展開が豊富で、読者が求めているものはほぼ用意されているといっても過言ではないです。ありがたい。
緑色の下
こちらもハードコア系BL漫画です。
カフェでアルバイトをするアートスクール学生のマシューが、偶然来店したジンの美しさに見惚れて、彫刻のモデルを依頼することで関係が始まります。
最初は「こいつ…おもしれー男…(笑)」のムーブを受けのジンが取っていて、強気でかっこいいジンに主導権があるところに、韓国BLの趣が如実に感じられます。確かに、ジンに振り回されながらとことん心酔しているマシューは「面白い男」です。しかしながら、話が進み、人間味や社会性の希薄なマシューがジンだけに心酔していることが明らかになると、その気味悪さがジンの強さを圧倒していくように感じました。実際にジンもマシューを「気味の悪い奴」と評価しており、他人から恐れられる存在のジンが不気味がっていることからも、マシューには狂い攻め・執着攻めの才能がありそうです。
本国では2021年から連載が開始されており、同年にRIDI BOOKSで賞を取るほどの人気作であったため、既にメディアミックスが豊富というありがたい福利厚生があります。オーディオドラマやキャラソンだけではなく、最近ではコラボカフェも開催されていてグッズ展開も増える一方です。
オーディオドラマ:오디오코믹스(AudioComics)で配信中
オーディオドラマのティザー↓
キャラソン
ぜひ。